軟骨無形成症
出典: 低身長治療病院情報
目次 |
軟骨無形成症とはこんな病気
軟骨無形成症は、四肢短縮型小人症(手足が短いため背が大きくならない)のうちもっとも頻度が高いもので、発症は1万人~2万5千人に一人といわれています。 英語ではachondroplasia(アコンドロプラジア)と表記されます。以前は「胎児性軟骨異栄養症」ともいわれていましたが、現在では「軟骨無形成症」にほぼ統一されています。「ア」は無い、「コンドロ」は軟骨、「プラジア」は形成を意味しています。
◎症状
軟骨無形成症の代表的症状としては、主として低身長があげられます。骨のうち長管骨という手や足の長い管状の骨の成長軟骨の発達が悪く、成人男子の平均身長が130cm、女性で124cmにしかなりません。 外見的には頭囲が大きく鼻の部分が低いという共通の特徴があります。また、背骨の彎曲が大きく、お尻の部分が出るというような姿勢になります。 またそのほかにも、軟骨の形成が不十分なため、外見的に低身長であるほかに、腰痛・関節痛等の障害、無呼吸・中耳炎等を含む呼吸器関連の問題、および頚椎や大後頭孔が狭いために起こる水頭症をはじめとする脳神経に関する問題、腰椎の狭窄による歩行困難・排泄障害など、多種の重大な問題が報告されています。 新生児・乳幼児においての運動能力の発達は個人差が大きく出るところですが、この疾患では筋力が弱い場合が多く、一般に比べて約半年から一年の遅れが生じています(首のすわりや歩行など)。小さいうちは関節がやわらかく筋力が弱いため全体的にグニャグニャした感じでしっかり座ることが出来ません。 この疾患によって、直接に知能的な問題が生じると言うことはありません。ただし、合併症の中耳炎により耳の聞こえが悪くなり言語能力が遅れる場合があるので注意が必要です。 また、睡眠時無呼吸により注意力が散漫になることにより知的な遅れが生じる例が報告されています。鼻の周辺やあごの部分が狭いために睡眠時無呼吸症になりやすいのです。 脳幹圧迫が見られることがあり、中枢性無呼吸を含め呼吸器の異常となる可能性もあります。 青年期以降にはほとんどの方に関節痛や腰痛が生じます。時には腰椎の手術が必要となることがあります。 あごの骨の発達が悪く、歯並びに影響するという報告もあります。 このように、「軟骨無形成症」は単に背が低いだけの低身長症ではなく、さまざまな深刻な合併症をもつ病気です。
◎診断
軟骨無形成症の診断は、多くの場合特徴的な身体所見やレントゲン検査で可能です。胎児の段階で見つかることもまれではありません。また、患児が確定診断をするのに小さすぎたり、非典型的な場合には遺伝子を調べることで確認できます(第4染色体P16.3、FGFR3遺伝子の変異)。 軟骨無形成症の臨床的特長は次のようなものです。 ・低身長 ・手足の体幹に近い部分(上腕骨と大腿骨)の短い手足 ・肘の進展制限 ・中指と薬指の間がひらく三尖手 ・O脚 ・幼少時の胸腰椎の突背 ・歩き始める頃に腰椎の前弯が強くなる ・おでこが突出した大きい頭 ・顔の中央部の低発育(鼻根部の陥凹) ・下部脊椎の椎弓間間隔の狭小化
◎原因
この病気の原因は長い間不明とされていましたが、近年軟骨を形成する遺伝子の異常であることがわかってきました。また、染色体中のその遺伝子の位置も特定されるに至っています。 これは成長軟骨細胞の細胞膜にある「繊維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)」という増殖因子の受容体の異常で、これが刺激されると骨を形成する軟骨の成長が抑制されて、主に手足の骨の成長が低下するというものです。 遺伝子の異常の発生箇所は、第四染色体の短腕上(P16.4)に存在しています。この部分の塩基の1つが入れ替わることにより1つのアミノ酸が別のアミノ酸に変わってしまいます。この、たった一つの塩基の変異により病気が発生してしまうのです。 この病気の発症は、常染色体優性遺伝の様式をとります。つまり、両親から受け継いだ一組の遺伝子のうち、一方の遺伝子にでもこの病気の要因があれば症状が現れるということです。ですから、この病気の親から同じような病気の子供が生まれる確率は理論的には50%となります。両親ともこの病気の場合には両親からそれぞれ50%の原因遺伝子を受け継ぐので、発症の確立は75%になります。また、原因遺伝子が重複した場合には致死性となり生存率はかなり低いものになります。 しかしながら、実際の患者の多くは病気を持たない両親から生まれており、この場合は遺伝子の突然変異によるものと考えられています。したがって、このような場合、同じ病気の子供が続けて生まれてくる可能性はきわめて少ないといえます。
◎治療
病気の原因は明らかになってきましたが、原因遺伝子を対象とした根本的な治療はまだ行われる段階には至っておりません。現在行われている治療は、それぞれの年齢段階に応じた問題に対処するための、対症的なものが主流となっています。 一方、重篤な合併症が生じていない場合には、この病気を受容し、生活の質の向上(QOL)を考えていこうという立場のかたもいます。
◇新生児、乳幼児期
大後頭孔狭窄が原因となる神経症状(痙性まひ、睡眠時無呼吸症など)に対する大後頭孔拡大術、水頭症に伴う脳圧迫亢進症状に対するシャント術など、脳神経外科的治療が中心になっているようです。 また、耳や鼻の管が狭く中耳炎、鼻炎等が生じる例が多く、これらに対する耳鼻科的治療も多く行われています。中耳炎に関しては、耳の聞こえが悪くなるため言語能力が遅れることがあり、その後の知的な遅れにつながることがあるので十分に注意する必要があります。 滲出性中耳炎は、痛みが少ないため乳児が自分から訴えることがないことから発見が遅れることがありますので特に注意してください。 滲出性中耳炎に対しては、鼓膜にパイプを挿入する手術などが行なわれています。 一方、個人差はありますが一般的に筋緊張が低いため運動能力が遅れる傾向にあり、理学療法が必要となる場合があります。 大後頭孔の狭窄のため脳内の圧力が高くなり頭囲が拡大することがあり定期的な計測が必要です。水頭症が疑われる場合には、シャント術という頚椎にパイプを埋め込む手術が検討されます。これは長期間の装着になるため慎重な検討が必要です。 睡眠時無呼吸症に対しては、気道を広くするため扁桃腺およびアデノイドの切除が行なわれます。軟骨無形成症は頚椎が狭いため、このような手術の場合にはこの病気を熟知した医者の判断が必要です。 また、専用のマウスピースなどを装着し呼吸を楽にする方法や、機器により空気を送り込む方法などがあります。詳細は専門の耳鼻咽喉科医師にご相談ください。 また、身長に比べ頭が大きいので歩くときに不安定になりがちです。ひざ関節もしっかりしない場合が多く、捕装具が必要になる場合があります。
◇学童期
下肢の変形に対する矯正骨切り術、低身長に対する脚延長術の整形外科的治療が主体となっています。また、脚延長術は骨折した場合損傷部に修復作用が働きその隙間を埋めようとする作用を応用し、伸ばそうとする骨を手術で切り離し、創外固定器で連結し、1日に1mmの割で伸ばしていく手術です。この治療法は長期の時間を要し、10cmから15cmの延長で1年近くかかります。また人工的に骨折を起こすわけですから痛みを伴う治療となる場合が多く、治療する本人の意思が重要になってきます(本人の治療に対する意識が高いほうが治療効果も良いようです)。 上肢に対する骨延長術もおこなわれる場合がありますが、手の神経への影響が大きいため、下肢に比べて事例はまだ多くはありません。 また、近年、成長ホルモン療法も行われるようになってきました。軟骨無形成症は成長ホルモンが不足しているわけでないので、下垂体性小人症に比べて効果は大きくはありません。また、医師によって治療法の効果に対する考え方も異なっています。本人、親そして主治医とが十分に話し合い納得して行なう必要があります。 この治療法も成長ホルモンを毎日数年間注射することとなるため、長期間の治療になります。
◇成人期
腰部脊柱管狭窄症(腰痛、下肢痛、間欠性は行、排泄部のまひ)の発生することが多く、これに対して神経の除圧を目的とした椎弓切除術、形成術を要することがあります。また、頚椎、腰椎などに同時に狭窄が生じる、広範囲脊柱管狭窄症となる場合があります。定期的にMRI等による確認をすることが必要です。 また、関節部に負担がかかるため、関節痛が生じることがあります。 出産の場合は骨盤が狭いため帝王切開となる場合が多いようです。 最近では、遺伝子レベルでの治療法の研究も進み、骨延長手術に骨芽細胞移植術を組み合わせ治療期間を短縮する方法や、骨の成長を促すホルモンの研究などがおこなわれています。 近い将来、さらによりよい治療法が確立されていくだろうと思います。
軟骨無形成症(軟骨異栄養症)は厚生労働省が指定する「小児慢性特定疾患」の対象疾患です。医療費の補助が受けられます。制度の詳細については、つくしの会役員やお近くの保健所にご相談ください。
外部リンク
- 低身長クリニック渋谷[1] 日本初の身長を伸ばす専門クリニック。プロのドクターが集い、お子様が『希望身長』になるまで共に成長を見守る。

